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副学長 横川先生推薦図書 パート1

読書という旅に出よう
―公立小松大学で学ぶ学生の皆さんに―
(パート1)

「FACTFULUNESS」(ファクトフルネス)」
ハンス・ロスリング他著 日経BP社

「10の思い込みを乗り越え、データを基に、世界を正しく見る習慣」という副題がついているが、この本の題名をあえて日本語に訳するとすれば、「真実の一杯詰まった事実」あたりだろうか。何が本当のことであるかがよく分からなくなったとき、やはり立ち返るべきところは「ファクト」である。
著者のハンス・ロスリングは、スエーデンの医師であり公衆衛生の専門家である。貧困、環境、医療、人口など、今日の世界が抱えるグローバルな課題が、とかく悲観的な視点から捉えられ、いきおい人類と地球の終末論と結びつきがちとなる昨今。しかも、研究者は現状肯定よりも現状批判、加えてペシミスティックな知見のほうがより深く真実を捉えているかのような印象を与えると、著者は述べる。具体的な10の思い込みの事例について、3択の質問形式でもって、ファクトを突きつける。つぎつぎと真実が暴かれ、そのたびに読者は怒りと無念さのやり場に困るというオチがつくのが愉快でもある。
第4章は恐怖本能について、「危険でないことを、恐ろしいと考えてしまう思い込み」の例を、不安神経症に怯える現代市民にぶつける。恐れることは、ホモサピエンスが生き延びるための武器であったが、どうじにこれを手放さなければ、生命力までも否定してしまいかねないネガティーヴな心性でもある。
「正しく恐れる」ためには、まず、常識とされてきたことを疑ってみなければならない。「思い込み」は知性の硬化であり、それが妄信や迷信となれば人間の生命力を枯らしてゆく。本当の知性とは、悲しみを生きる力に変えるのである。
スエーデン人固有の合理主義とプラグマティズムをもって、主知主義を謳う著者は、健全な「ペシミスト」としてのデカルト、そしてよく生きるための哲学者スピノザの衣鉢を継ぐものである。