お知らせ

  • 2018/06/27
  • 学長推薦図書 その3
  • 「The Usefulness of Useless Knowledge」 Abraham Flexner, Robert Dijkgraaf 著 Princeton University Press 発行 2017年
     
     Flexner による伝説のエッセイ The Usefulness of Useless Knowledge の再版。Flexner は、必ずしも望ましい人材育成を行っているとはいえなかった多くの医学校を閉校に追い込むなど、広汎な大学改革をおし進め、米国における近代高等教育の基礎を築くとともに、Einstein をはじめとする頭脳が集うところとなった、Institute of Advanced Study in Princeton を創設した。
     本書の前半では、現所長 Dijkgraaf が The World of Tomorrow と題して、Institute の歴史と Flexner のエッセイの意義を述べている。Institute 史における白眉は、Einstein と von Neumann であろう。ともに思考を重視し、Einstein に関しては、数学的思考が相対性理論につながったことや、超伝導などの諸発見の物語が語られる。数学者 von Neumann は an ever greater genius than Einstein とされ、1946年にはすでに computer を構想していたという。
     Flexner の The Usefulness of Useless Knowledge では、curiosity(好奇心)の重要性が語られる。Usefulness(効用)を意識することなく、素朴な curiosity から発した研究が、如何に大きな恩恵を人類にもたらしたか?その例として、Faraday、Maxwell、Gauss、Einstein が挙げられ、Galileo、Bacon、Newton に遡りうるとしている。一方で、curiosity にはじまり、science のみちすじを通って、usefulness に行き着く進め方の例として、Pasteur や Ehrlich を挙げている。Flexner のエッセイは優れた科学史論としても現代に通用するものであるが、ヨーロッパでナチズムやファシズムが台頭していた変節の時代にあって、つぎのような表現に象徴される、束縛されない精神の自由を尊重した、彼の信念は、時代や国境を超えて継承されるべきであろう: A poem, a symphony, a painting, a mathematical truth, a new scientific fact, all bear in themselves all the justification that universities, colleges, and institutes of research need or require.
    
    
    Further reading:「輝く二重らせん―バイオテクベンチャーの誕生」  アーサー・コーンバーグ著 1997年 メディカル・サイエンス・インターナショナル社発行
     著者アーサー・コーンバーグ博士は、20世紀を代表する生化学者。上記 Flexner のタイピングにしたがえば、Faraday、Einstein 型、Pasteur、Ehrlich 型、いずれの生き方にも許容と理解を示す。「発明は必要の母」との博士の箴言が掲載されたのが本書。いわく、「「必要は発明の母」という諺はたいていの場合誤りであり、この逆こそ一般に真実なのである。つまり、「発明は必要の母」なのである。ちょっとした思いつきから生まれたものが、それが医薬品であれ工業製品であれ、人類にとって有用有益であれば、たちまち人類に不可欠な必需品となる。」(宮島郁子/大石圭子訳)イノベーションやベンチャー起業について考える人にお勧めの書。
     コーンバーグ博士の別の著書「それは失敗からはじまった―生命分子の合成に賭けた男」(1991年5月羊土社発行)では、「学部の中心的な使命というものは、知識を前進させることであり、その精神を学生に吹き込むことである。」と研究に裏打ちされた教育の価値を説く。